会社と共存しながら自分自身の幸福論で生きるには~「坂の上の坂」を読んで(レキブロブックレビュー)
2012年12月23日 日曜日 | LIFE STYLE
こんにちは、久しぶりの投稿になります、ビジネスデザイン部の安田です。
さて、先日面白い本を読んだのでご紹介したいと思います。その本というのは、元リクルートの藤原和博さんがお書きになった「坂の上の坂 30代から始めておきたい55のこと」です。一部で話題にもなっているのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この本の内容を端的に表現しますと「今までとは違う”正解がない、成熟社会”において、自分自身の幸福論に基づいた幸せな人生をどうやって得るか」、その考え方と方法が書かれています。
まず、以下に目次からいくつかピックアップしてご紹介します。これらをご覧いただくと、なんとなく本書の内容が見えてくると思います。
自分の時間と、自分の仕事を取り戻す
あえて危機を演出することが、自分を成長させる
自分なりの「豊かさ」を定義する
”いい子”は、もうやめる
”頑張る教”はもうやめる
正解のない時代になっていることに気づく
修正主義で、まずは一歩踏み出し、前に進む
組織に棚卸しされる前に、自分の棚卸しを
組織内自営業者になる
企業と自分の理念の接点を見極める
自分で本を出し、講演できるスキルを身につける
会社以外のコミュニティを早めに探しておく
まずは、名刺を出さない練習から
「正解主義」「前例主義」「事勿れ主義」を打ち砕け
著者は東大を卒業後、リクルートに入社。営業統括部長などを歴任後、ヨーロッパに赴任。その後、杉並区立和田中学校の校長として5年間働き数々の変革を起こした方なのですが、この本では主に、サラリーマンというポジションに身を置きつつ、どう自分が考える幸せと折り合いをつけながら今までやってきたか、また、これからの”正解のない”成熟社会にどういう姿勢で臨んでいくべきかが具体的に書かれています。
少し長くなりますが、特に面白かった箇所を以下に抜粋してご紹介したいと思います。
ビジネスの現場でも競争が極めて激しくなり、正解がすんなり出てくるケースは希。正解のない状況で、同自分なりに納得でき、関わる他者を納得させられる解を導き出していけるのか。「納得解」を多様に導ける「情報編集力」が問われている。
成熟社会では、何打打ってもいいから、とにかく早くゴールにたどり着く、というルールに変わっている。霧が晴れるのを信じていつまでも待ち続けている人より、アプローチの数は多くてもさっさとホール数をこなしていく人のほうが勝つのが成熟社会。アプローチを試行錯誤でこなしているうちに、どれぐらい打てばいいかの勘所もつかめるし、霧への対処法もマスターできる。正解にこだわることなく、修正を繰り返していくことで、経験を積み上げていけばいい。とにかく、ただ、一歩前へ、踏み出すこと。失敗したら修正すればいい。それこそが、どこに落ちているわけでも、隠れているわけでもない「納得解」に近づく最短距離。
一番危ないのは、会社のなすがままにされること。そして人生の後半を形作るベースになる大事な中盤戦で誰かの価値観に振り回されること。そこで「組織内自営業者」という考え方を意識すべき。組織内で自営業者のような存在になるためには、特化したスキルセットを持っていればいい。それなりのスキルがあり、どんな方向に自分を向かわせたいのかがはっきりしていれば、いかなる職種であっても自営業者化は可能。いずれ会社と交渉することができるよう、着々とスキルを高めておく。大事なことは、早めに方向を定めておくこと。会社という建物の中でどんな店を出すのか。それさえはっきりすれば、あとは自営業者に必要な能力を磨き続けるだけ。組織内自営業者の意識を持っていれば、組織に埋没(組織に人生を委ねること)しなくて済む。組織内自営業者になろうという意識を持つと、会社ほど自分の能力が磨ける場所はない、ということに気づくこと。給料をもらいながら自分を鍛え上げてくれるのが会社。企業は個人にとって最高の修行先、つまりビジネススクールになる。個人をブランドにすることも可能。そうなれば会社にとってもプラスになる。
「寄業人」とは、組織とパートナーシップを保ちながら仕事をする個人を指す。あえて組織を離れず、組織にいながら個人の力を発揮することができる仕事のやり方。「寄業人」=企業内自営業を目指すときに重要なことは、会社と自分のベクトルの和を最大にしようという心掛け。ただ自分のやりたいことだけを主張しても会社には受け入れてもらえない。そうすると、自分の力を最大限発揮する環境が手にできない。重要なのは、会社や組織のビジョンや戦略を理解すること。そこから、自分のやりたいこととのマッチングを模索する。実は企業内自営業者としての道は、組織や企業に反発するのではなく、逆に近づいていくことでみえてくるもの。
会社に所属しながら如何に自分の幸福な人生を実現するか、というのは私たちサラリーマンにとって永遠の命題だと思いますが、上記の藤原和博さんのような考え方が根底にあれば、会社とうまく共存しながら、お互いにプラスのベクトルで未来に向かって進んでいけると思います。
また、本書では、企業内自営業者になるためのスキルセットをいかにして身につけるかのヒントも書かれています。
正解が存在せず、いろいろなものが移り変わっていく時代だからこそ、いくつものアクションを常に走らせておくことが、後に大きな力になる。ひとつが終わって次に向かうのではなく、ひとつのことをやりながら次のことも進めておく。そうやって山並みの裾野を平行して創る。会社という右足に重心をかけながら、一方で左足を意識しておく。その候補をいくつか常に持っておき、あれこれ考える前に踏み出しておく。好きなことから着想すればいい。
なお、本書によると、なにかに熟練するには1万時間かかるそうですが、これは、1日3時間やれば10年で到達できることになります。この方法で自分の山並みをいくつか持っておくことが将来活きてくる、ということですね。
いかがでしょうか。興味を持たれたかたはぜひ本書を読んでいただければと思います。
なお、先日、藤原和博さんの非常に興味深く面白い対談をネットで見つけましたので、参考までにご紹介します。
東洋経済ONLINE「10年後に何が食えるのか? プロと考える仕事の未来」
http://toyokeizai.net/category/naniga-kuerunoka
ということで次回は上記の「1日3時間」を如何に習慣化させるか、の参考になりそうな本をご紹介したいと思います。