8月21日(金)「敵か?味方か?クラウドは沖縄に何をもたらすのか? レキサスクラウドカンファレンス with AWS」開催レポート
2015年8月25日 火曜日 | BIZ & TECH
こんにちは、コーポレートデザイン部の安田です。レキサスブログでもご案内しておりました「レキサスクラウドカンファレンス with AWS」が、予定どおり8月21日(金)、無事に終了しました。こちらの記事では当日の様子や登壇者の発表内容を写真付きで詳しくご紹介したいと思います。
今回のカンファレンスの趣旨・内容
今回のカンファレンスは、今まさに起こっている時代の大変革の中心にある「クラウドコンピューティング」というパラダイムシフト、そして「アマゾンウェブサービス(AWS)」という最強の黒船を、特にIT業界に身を置く私たちはどのように受け止め、どのように対処していけば良いのか?ということを登壇者と参加者が全員で考える場にしたいと考え、開催させて頂きました。これまでの状況、そしてこれからの見通しは? 実際のところ関係者の本音は? 私たちはこれから具体的にどう行動すればいい? こういったポイントを可能な限り明らかにすべく、ふだん全く異なる立場でクラウドと関わる有識者/経験者を多数お招きし、それぞれの視点でクラウドとの付き合い方や今後のシステム選定/利用/開発/営業のあり方を語り尽くして頂くことをゴールと設定しました。
当日のプログラムは以下のとおりです。
タイムスケジュール
13:00~13;30 受付
13:30~13:40 オープニング
13:40~14:30 基調講演「システムインテグレーション崩壊の時代、クラウドは我々に何をもたらすのか?」 ネットコマース株式会社 代表取締役 斎藤昌義氏
14:40~15:30 クラウドビギナーのためのAWS入門セミナー「AWSクラウド事始め」 アマゾンデータサービスジャパン 榎並利晃氏
15:40~16:30 クラウドユーザーの生の声「クラウドで実現したワークスタイル革命」 株式会社ユナイテッド・ビジョン代表取締役 中村あきら氏
16:40~17:30 パネルディスカッション「i昨日の常識を疑え。クラウドにDiveすべき理由とITのこれから」株式会社システムサポート クラウド事業部長 河村潤一氏、ネットコマース株式会社 代表取締役 斎藤昌義氏、株式会社ユナイテッド・ビジョン代表取締役 中村あきら氏、アマゾンデータサービスジャパン 榎並利晃氏、株式会社レキサス下門祐二 モデレーター:株式会社レキサス 常盤木 龍治
登壇者プロフィール
1)ネットコマース株式会社 代表取締役 斎藤昌義氏(基調講演)
1982年に日本IBM入社後、1995年にネットコマースを設立し代表に就任。産学連携や新規事業開発、人材育成に従事している。 著書は「システムインテグレーション崩壊 ~これからSIerはどう生き残ればいいか?」/「【図解】コレ1枚でわかる最新ITトレンド」。「システムインテグレーション崩壊」では、クラウドの利活用も含め、システム開発、システム営業の本質的変革を提起し、業界関係者に大きなインパクトを与えた。
2)株式会社ユナイテッド・ビジョン 代表取締役 中村あきら氏
1985年生まれ。大学卒業後、サイト制作を個人で開始。2010年に一人暮らし家具販売サイトZIPANGs(ジパング).comを開設(本社:沖縄県)。設立から1年で10培の成長を記録し、ベンチャー通信「EC を活用して成功した企業100社」を受賞。大手EC サイトの営業利益率1~4%に対し、15%以上を達成。次世代の経営者として講演も多数。14年秋からシリコンバレーに移住。
3)株式会社システムサポート クラウド事業部長 河村潤一氏
2013年に日本オラクルからシステムサポートへ転職。2014年に同社クラウド事業部を設立し、金沢、名古屋、大阪を拠点にクラウド展開活動中。日本NCR、日本オラクルと外資系で一貫して営業職を経験。オフコン、UNIX Srever、アプライアンス製品、研修、 DB、ERP、とさまざまな製品の営業を経て今に至る。
4)アマゾンデータサービスジャパン株式会社
パートナーソリューションアーキテクト 榎並利晃氏
ユーザ企業として電子マネーシステム、インターネットサービス関連のシステムの開発・運用、プロジェクトマネジメントに携わる中、2010年からAWSを使ったシステム開発・運用を経験。クラウドの力に驚愕し、2013年にアマゾンデータサービスジャパンに転職、今に至る。
5)株式会社レキサス グローイングビジネス部 下門祐二
米軍基地内大学(UMUC)就学中。コンピュータサイエンス専攻、経営管理学副専攻。IT frogs(現Ryukyufrogs)1期生。2008年レキサス入社。2009年~2010年にレキサス米シリコンバレーオフィス赴任。現在は主にAWSやkintone等クラウドを活用したシステム設計/構築/運用のコンサルティングセールスに従事。
6)株式会社レキサス 常盤木龍治
エバンジェリスト/プロダクトマネージャーとして、これまで数多くのトップシェアソフトウェア製品、クラウドサービスの企画/開発/営業/マーケティングに携わり、MIJS、CUPA等国内のIT団体で要職を歴任。5,800名をこえるFacebookコミュニティ、カレー部のキャプテン。現在、レキサスでエバンジェリスト、事業推進部マネージャーとして、ASPICではクラウドコンピューティング国際戦略委員として、沖縄県内のクラウドに関する意見交換コミュニティであるクラウドチャンプルーでは実行副委員長として活躍中。
基調講演「システムインテグレーション崩壊の時代、クラウドは我々に何をもたらすのか?」
ということで始まりましたレキサスクラウドカンファレンス、基調講演となった「システムインテグレーション崩壊の時代、クラウドは我々に何をもたらすのか?」では、ネットコマース株式会社 代表取締役の斎藤昌義さんにご登壇頂きました。
オリオンビールがお好きのようです♪
現実世界とサイバー世界が緊密に結合されたシステムが構築されつつある。
これからはモバイルネットワークも5G化するので、もはやどこにいようと全く関係なく高速ネットワークインフラに支えられたオフィス環境が整う。
このスライドが重要ポイントその1。
ITインフラの構築と運用は、クラウドや人工知能に代替されてゆく
アプリケーションの開発と運用は、ビジネス・スピードとの同期化を求める
ビジネスは競争力の強化のために、テクノロジーへの依存を高めてゆく
これらにより、
「ITビジネスの収益は、工数提供の対価から ビジネス価値の対価へとシフトする (ビジネス価値=スピード・変革・差別化)」
これまでのような単なる「工数ベース」のITビジネスはもう過去のものになります。代わりに、お客さまに対し如何に「ビジネス価値」を提供できるか、それこそがビジネスの中心となるのです。工数ベースに慣れてしまったIT企業にとっては厳しい変化ですが、お客さま視点で捉えれば、これこそが本来あるべきIT企業の姿だと感じます。
では如何にして私たちは「ビジネス価値」を提供するのか? そのヒントは「新しい組み合わせ」にある。
重要ポイントその2。「従来型SI(システムインテグレータ)ビジネス」から「ポストSIビジネス」にどうシフトすれば良いのか? 従来型SIビジネスというのはつまり、受託開発・保守、運用管理業務派遣などの工数積算を前提したビジネス・モデルを指しています。また、ポストSIビジネスは、新しいテクノロジーや開発手法を駆使し、工数積算にこだわらず、収益構造も工夫したビジネス・モデルのことを指しています。もちろん、既存システムの保守やユーザー企業の独自システムの運用管理などは今後も残りますが、減少傾向に。また、これまでのインフラ・プラットフォームの構築運用管理といった業務も、ポストSIへのシフトを考えると国内SI業者が取り組むには難しい領域と考えられます。
こちらがポストSIビジネス・モデルの案を具体的に示したスライドです。アプリケーション志向/インフラ志向/専門特化志向/スピード志向を基軸に、アプリケーションプロフェッショナル/クラウドプロフェッショナル/ビジネス同期化/インフラ提供という4つの戦略、そして9つのシナリオに整理されています。このスライドは参考になりますね。。。が、写真が小さくて字が読めない!という皆さん、ご安心下さい!! こちらについては斎藤さんご自身のブログで図とともにとてもくわしく連載解説されていますので、ぜひアクセスしてご確認ください。
クラウドビギナーのためのAWS入門セミナー「AWSクラウド事始め」
この日2つめのプログラムは「AWSクラウド事始め」ということで、クラウドという台風の目の中心にいらっしゃるアマゾンの榎並さんをお迎えし、改めてAWSについて解説いただきました。
例の、ジェフ・ベゾスさんがレストランのナプキンに書いたと言われるアマゾン社のビジネスモデル。
日本語にするとこうなります。AWSはサービス開始以来すでに40数回「勝手に」値下げしているわけですが、この図に最初から”値下げ”が入っていますね。たいしたものです。。
↑答えはノーですね。ちゃんと利用者自らリージョン(データセンターの場所)を選べます。
こちらは、AWSのセキュリティレベルはオンプレミス(いわゆる既存のデータセンター)に勝るとも劣らないという話。このテーマはクラウドとかAWS関連でよくある質問ベスト3くらいに入るんじゃないかと思いますが(?)、実際、AWSはセキュリティ対策においてものすごい投資をしているようですし、結果10以上の第三者認証も得ています。
また、アマゾン社はパートナー戦略をとても重視していて(例のナプキン図にも「パートナーの増加」という文字が見えます)、日本でもすでにこれだけたくさんのパートナーエコシステムを形成しています。私たちレキサスも、今回金沢からお越し頂いたシステムサポートさんもその中の一社です。
こちらは「エコシステムソリューションパターンカタログ」という本。AWSに対応したソフトウェアやSaaSが紹介されています。PDF版はこちらからダウンロードできますよ。
AWS実績例(抜粋)。沖縄にはありませんが、ファミリーレストランでおなじみのすかいらーくグループや、
ローソンでもAWSをベースとした仕組みを構築しています。
もともとクラウドベースのシステム構築に消極的だった企業IT分野でも、AWSに仮想プライベートクラウドや専用線接続サービス、BYOLが整備されたことで移行が促進されたとのこと。
最近は、仮想デスクトップやモバイルサービス、ビッグデータ、IoTに対応したサービスも拡充しているそうです。
まとめ:今後のITにAWSを!
・クラウドのメリットを最大限活かす!
ー初期投資不要、従量課金、リソース、時間短縮、ビジネス集中
・AWSの特徴を活かす
ーグローバル、高セキュリティ、高可用性
ー40を超えるサービスをビルディングブロックのように組み立てる
・すでに多くのお客様が、様々な用途で利用している
・IT部門/SIerのオペレーションが軽減できる
クラウドユーザーの生の声「クラウドで実現したワークスタイル革命」
3番目の登壇者は株式会社ユナイテッド・ビジョン 代表取締役の中村あきらさんです。
中村さんはメチャ若い!だけではなく、とってもソフトな話し方をされます。でも言葉ひとつひとつがすっごく突き刺さるという不思議なパーソナリティをお持ちです。言葉がこちらに突き刺さるのは、それらがすべて経験に基づいたものだからでしょうね。
23歳でサイト制作で独立というスピード感もすごいですが、少なからぬ人数の社員を解雇という辛い経験をこの若さでお持ちというのもふつうじゃないです。。
中村さんの著書。売れてるみたいです〜。
中村さんはご自身でジパング.comという一人暮らし向け家具販売サイトを運営されています。そこでなぜクラウドサーバを利用しているかというと、、結局、社員を解雇という経験まですると、サービス運営に必要な全てについて合理性を徹底的に追求せざるを得ないわけで、その結果、クラウドサーバに決めたとのこと。
レキサスのこともすごく褒めて頂きました。。
クラウド化することで得たもの。。
つまりは「働く場所」という概念から解放されたことによる効率化の実現と意識の拡大でしょうか。
また、別の観点から言うと、高城剛さんが「移動距離と創造力は比例する」とおっしゃっているんですが、そういう意味でも「働く場所に依存しない」というのは今後とても大切になってきますね。
これから日本でも変化を起こすであろうサービスたちの紹介。
こちらはUBERですね。沖縄で始まるとまさに大変革が起きますね。。
マンツーマンでの教育サービス。これも今後はすごく重要になるはずとおっしゃっていました。なぜなら、
つまり、これだけ変化の激しい時代なので、これからはその都度その都度、必要な技術を必要なだけ学びとりながら新しい仕事をこなしていくのが当たり前になるとのこと。実際、中村さんもWeb制作を始めたときはマンツーマンで経験者の方に習ったそうです。
クラウド秘書サービス。これも伸びるはずとおっしゃっていました。
つまり、こういったサービスを安価に使いたい人だけでなく、自分のスキマ時間にこういったサービスを提供したい人も多数いるわけで。
クラウドの普及にあわせて、世界「大移民」時代がやってくる。その数を併せると、ひとつの国以上の規模になると言われている。
ちなみに、将来的にはhttp://maidsafe.net/のような分散型のテクノロジーが発達。すると、もはやデータセンターやサーバー、さらには金銭コストもなくなるという世界が。。
中村さんのプレゼンの結論に繋がる重要スライド。
Google創業者、ラリー・ペイジさんの言葉です。
たくさんの会社を見てきて、なぜ長続きしないかを考えてきました。
多くの会社が現れては消えていきました。彼らは何を間違ったのだろう?と。
共通して犯した間違いは、多くの場合「未来」を見通してなかったことに尽きます。
未来がどういうものになるのか、どうやって私たちはそれを創造できるか、
そして自分の会社をどうその未来に集中させられるか。
だから私は、未来がどうなるかに集中しているんです。
結論!
そしてもちろん、「変化に柔軟」で「強い会社」になるために
クラウドは味方でしかありえません。
。。。と、ここまでざっと中村さんのプレゼンを写真と共にご紹介しましたが、実は中村さんのサイト「Akira Drive」で、今回のプレゼンの詳し〜い解説がすでにアップされております(@_@) ぜひご覧下さい。
パネルディスカッション「昨日の常識を疑え。クラウドにDiveすべき理由とITのこれから」
そして迎えた最終ラウンドは、パネルディスカッション「昨日の常識を疑え。クラウドにDiveすべき理由とITのこれから」です。
登壇者の皆さんは、先の斎藤昌義さん、榎並利晃さん、中村あきらさんに加えて、
株式会社システムサポート クラウド事業部長の
河村潤一さん。堅牢なシステム開発を強みとするシステムサポートさんにおいてクラウド事業を推進していらっしゃいます。河村さんにも今回このカンファレンスのためにわざわざ来沖頂きました。
弊社のグローイングビジネス部、下門祐二。AWSやkintoneなど、クラウドを活用したシステムのコンサルティングセールスを担当しています。
モデレーターは同じく弊社より、エバンジェリスト常盤木龍治。
パネルディスカッション、スタートと同時に
いきなりこのテーマ by 常盤木龍治(笑)
初っぱなから考え込むパネリストの皆さん。。
どんどん来ます、
どんどん来ます、、
どんどん来ます、、、
どんどん来ます、、、、
どんどん来ます、、、、、
ウーン(笑)
と唸りつつも、私たちのヒントになる言葉をパネリストの皆さんからたくさん頂きましたので、以下にまとめてご紹介したいと思います。
「旧来のシステム構築スタイルは5年は持たないのでは?」
「クラウドの襲来に我々SIerは恐怖を感じるべき。」
「クラウドベースに移行した際、社内的に”利益”をどう定義するかがポイント。」
「クラウドでは、その期で見た利益ではなく、長期で見た利益構造を考えるべき。」
「クラウドありきの時代においては”地域”は呪縛になる。モビリティとメンタリティーのレボリューションが必要。」
「アメリカ人は目的達成に対してとても効率的なアプローチを取る。日本人は丁寧すぎる側面があると感じる。」
「新規事業は自分の都合で考えず、まずはゴール、つまり本当のお客様の未来を考えることが大切。そのギャップを埋めることを考えるのが事業計画。」
「資金ショートした時から利益優先の考え方になった。すると、本当に必要な部分を徹底的に考えるようになった。その答えがクラウド。」
「キャッシュフローがまだ回っているうちに、利益主体の収益構造に変えなければだめ。」
「ミャンマーやベトナムの優秀でしかも若いエンジニアたちとの関係は避けられない。日本エンジニアの差別化を考えると、開発、運用、業務が分かって、話もできないと生き残れない。上位レイヤーに関われないとだめ。」
「日本のシステム開発はベンターとユーザーがミスマッチ。顧客視点から離れている。」
「”地場に根ざして”という考え方は、世界中に敵がいる今の状況の中では競争力の低下につながる。」
「沖縄の会社、日本の会社は、いま自分たちが守っていることを守ろうとしてピンチになっている。視点をもっと大きく持ってみてはどうか?」
「とにかく今の時代は変化が早すぎる。だからキャッシュがまわっているうちに、未来から逆算して考えるしかない」
ということで、いかがでしたでしょうか。だいぶ長くなってしまいましたが、当日会場にお越し頂けなかった皆さまにもあの場の空気を感じて頂けたらと思い、まとめてみました。今後もレキサスでは、時代の変化に私たちはどう対処すべきか?といった、私たち自身のあり方について皆さんと一緒に考えられるようなカンファレンスを県内で開催したいと考えています。ぜひ引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。