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シリコンバレーレポート:JTPAギークサロン「アメリカの移民政策」について

こんにちは、シリコンバレー在住のMinamiです。

先日、シリコンバレーにある日本人コミュニティーのひとつ、JTPA (Japan Technology Professional Association) のセミナーのひとつであるギークサロンに参加してきました。

月に一度、いろいろな講師を呼んで行われるJTPAのギークサロンですが、名前のとおり技術系オタクの人しかわからないほど、いつも技術的に掘り下げて講演が行われています。が、今回は趣向を変えて、”キラキラギークサロン”と銘打ち、スピーカーには同志社大学で移民政策やグローバルな人材の雇用などについて研究されている手塚沙織博士を迎え、華やかな雰囲気での講演がスタートしました。

まず、手塚博士が強調したのが、政治に対する日米の感覚の違いが大きいということ。

それはアメリカが大統領制であり、日本が議院内閣制で政治の仕組みが根本的に違う事に起因するそうです。それを象徴する、”3”と”42”という2つの数字を手塚博士は示しました。これらは米国と日本でそれぞれ2年間の間に議会から提出されて可決する法案の比率だそうです。アメリカでは、たった3%の法案しか成立せず、いかにアメリカでは立法が難しいかが示されています。これこそが、アメリカではリーダーが変わったからと言って法律までが簡単に変えられる訳ではないという手塚博士の根拠になっている部分です。

アメリカの政治の三権利分立は立法府、行政府、司法府からなり、大統領は行政府に属し、行政を執行する事ができる。ところが、アメリカの政治システムでは日本と大きく違い大統領自身が法律を作る事ができない仕組みとなっている。上院、下院から上がった法律について、大統領として署名して認可することや拒否して立法を阻止する事ができる。(大統領の拒否権が発令されても上院、下院ともに2/3の賛成があれば拒否権を却下できる)

では大統領は公約はどうやって果たすのか? それができる唯一の手段が大統領令です。

ところがその大統領令も過去に立法されている法律を根拠に作られているために、無制限に発行できる訳ではないし、大統領令が常に違憲ではないかどうかを連邦裁判所が常にチェックしており全てが執行される訳ではありません。
(その一例が、最近話題の指定7カ国からのアメリカへの入国拒否について違憲かどうかの連邦裁判所での裁判)

そして次に、手塚博士の話は移民法へと移っていきます。最初にスライドで出した数字が105万人。これは年間にアメリカへのオフィシャルな移民の数=グリーンカードの発行枚数。この数字は世界最大の移民受け入れ数となります(例えばカナダは25万〜30万人)。

次に105万人の内訳ですが、66%が家族の再統合と呼ばれているカテゴリーとなります。これは結婚や、国外にいる家族の呼び寄せなどになります。

次に多いのが経済ベースで13%、約14万人。この部分に属する人たちが高度人材と呼ばれる特別な技術や能力をもち、アメリカにとって移民を受け入れる事が利益と見なされて移民許可をもらえる層になります。

手塚博士は、全体の中で高度人材に対する移民許可の少ない割合が問題と指摘します。105万人のうちたった13%しか受け入れられていない、しかも移民許可を申請している人数ははるかに大きく、グリーンカードが発行されるまで、数年待たなければいけない状況にあります。

H-1労働ビザに関しても同様で、H-1労働ビザの申請数は大きく伸びているにも関わらず、発行されるビザの数は年間に一定数8万5千に制限されている。 発行数が限られている中で、応募総数が増えていく事によりH-1ビザ取得者の最終学歴や年収なども右肩上がりの状況となります。

2000年頃には申請者の6割近くは学士でしたが、2014年の統計では修士の割合が上がり、また逆に学士の割合が下がり、ともにほぼ同じ45%程度になりました。

年棒も右肩上がりを続けています。

手塚博士がもうひとつ問題だと指摘するものがH-1ビザを認可者の出身国の割合で、ある程度は想像できますが、なんと70%がインドだそうです。 日本は韓国と並んで1%程度の数字です。

これらの問題を解決するために過去にいろいろな法案が提出されていますが、それらはトランプ政権の前後で(現在のところ)あまり変わっていません。また今後も大きく変わるとは思えないと手塚博士は主張します。移民政策の立法は議会で行われ、その為に支持が大きく議員の中にないと法制化が厳しい事を根拠にあげています。
 
とはいえ、シリコンバレーにとって高度人材の確保は死活問題であり、政権に関わらずに独自にいろいろな政治活動が行われている事を知ってほしいと手塚博士は言います。

手塚博士はシリコンバレーやハイテク産業を中心とする政治活動として次の二つをあげています。  

FWD.us

Win the future

それぞれの団体にはビル・ゲイツからザッカーバーグまでIT企業を代表するビックネームが連なり、移民は重要であること、優秀な人材を受け入れ増加すべきであること、包括的な移民政策の推進、などをトランプ政権以前より掲げています。

そしてトランプ政権で我々はどうなるのでしょうか? 

トランプは法律は変えられない。
使える最強の武器は執行できるかどうかわからない大統領令。
でも使えるトランプの最大の武器は。。。。。 

Twitter で手塚博士の講演は締めくくられました。 

確かにそうかもしれません。アメリカ在住の方ならば、Uberのアンインストール問題があった事を覚えているでしょう。UberのCEOがトランプ政権に近かった事もあり、Delete Uberの運動がSocialを通じて一気に広がりました。

トランプこそが、Mediaよりも早く、多くの人間に情報を発信できるツールであるTwiterの価値を一番よく理解しているのかもしれませんね。 

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